私は自然分娩で双子を出産しました。
双子を妊娠する確率は、1%。
その中で自然分娩をするのは、20~30%。
(2024年10月22日時点GoogleAI調べ)
この数字からわかる通り、双子の自然分娩というのは、えらく珍しいことのようです。
自分としては出産方法にこだわりはなく、希望は「できる限り痛くないといいな」くらいでした。
そんな自分が自然分娩で生むことになった経緯や感想が、いつか誰かの参考になるかもしれないと思い、体験談を書きました。
※なぜ双子は自然分娩が難しいのかなど、そのような話はきちんとした医療情報のサイトにお譲りし、ここでは自分の体験のみ、自分が本当だと言い切れることのみを記録します。
自然分娩か、帝王切開か
自然分娩か帝王切開かを考える前にまず、双子で自然分娩をするためには条件があります。
説明の際に渡された紙をたまたま保存してあり、医師提供の情報に間違いはないと思うので載せておきます。
原則双子は帝王切開ですが、条件を満たす場合は啓蟄分娩を選択することがあります。
条件:二絨毛膜二羊膜性双胎、経産婦、頭位/頭位(or横位)、至急口の開きがよい、分娩室やオペ室、産婦人科、新生児科の人員や状況が空いており対応が可能と考えられる
そして自然分娩と帝王切開には、それぞれメリット・デメリットがあります。
担当医から聞いた話と、読んだ本から得た知識を総合したところ、妊娠初期の私の認識はこのようなざっくり言うとこのようなものでした。↓
◆自然分娩:母親の身体の負担が少ない
◆帝王切開:子どもにとってリスクが少ない
それで、当初は帝王切開を希望していました。
医療が発達した現代とはいえ、出産はやはり命の危険が伴うものですし、何があるかわからない。だったら、子どもの安全を最優先したい…と考えていました。
それに、長男を出産した経験から言えば、自然分娩だって十分に身体に負担があるもの。
陣痛の長時間にわたる苦しみや産後の恥骨の痛みを思い出すにつけ、「帝王切開の方が、麻酔とか痛み止めをガンガンにもらえば意外と楽に済んだりするんじゃない?」なんて考えてもいました。
(のちに、帝王切開で麻酔が効かずに地獄をみたというママ友の話を聞いて、この考えは完全撤回しました)。
33週を迎える頃に管理入院することになり、それから考えが揺らぎ始めます。
入院から約2か月の間継続してお世話になった担当医の方から、ずいぶん熱心に自然分娩を勧められたためです。
私の担当医はとても優しくて感じの良い先生で、「この先生で良かった!」と今でも思っています。
思ってはいるんですが…きっと、自然分娩の実績をつくりたかったんじゃないかなあ、なんて裏を考えてしまうほど、やんわりながらも強めに自然分娩をお勧めされていました笑
先生の言っていたことは、このようなことだったと思います↓
●●さん(=私)の場合、通常の双子自然分娩よりも少ないリスクで生むことができると考えられます。
●●さんは、33週目で既に子宮口が開きかけている状態です。
長男くんを出産している経産婦であるため、双子の重みに耐えきれずに子宮口が開いてしまうんですね。
しかしだからこそ、スムーズに生まれてくれることが想定できます。
帝王切開と自然分娩ではどちらもメリット・デメリットがあるので、決定はもちろん●●さんの意思です。
ただ、自然分娩での出産は、達成感もありますし、間違いなく素晴らしい思い出になりますよ。
それを聞いた私の心の中↓
「自然分娩のメリット:達成感と素晴らしい思い出を得る」
「帝王切開のメリット:子どものにとってリスクが少ない」
この二択なら、どんなにリスクが低かろうが、帝王切開を選ぶよなあ…。
というわけで、ずっと帝王切開に傾いたまま、管理入院生活を送っていました。
でも、「絶対帝王切開!」ときっぱり決められたわけでもなく、自然分娩の可能性は常に頭のどこかにあって、悩み続けていた感じです。
それだけ先生の勧めが熱心でしたし、先生のことを信頼もしていましたし…。
考え続けている間に、「双子の自然分娩なんて、やりたいと思ってできることでもないからやってみようかなあ…」という気持ちも出てきました。
リスクは限りなく低いと担当医の先生から継続的に説得されていたことで、だいぶ考えが緩くなってきていたようです。
出産予定日の2週間前くらいには、「自然分娩にしてみようかなあ…と思い始めました」と、担当医に伝えていたと思います。
分娩室まで来て決められない!自然分娩か!帝王切開か!!
せっかく自然分娩で生む気になっていたのに、出産直前になっても再び迷うことになりました笑
なぜかというと…
前日の最終検診では自然分娩が可能なポジションにいた三男が、当日分娩室でいざ生もうという時のモニターで180度回転していたから!
逆子なのか?自然分娩NGなのか?
ザワつく分娩室。
ちなみに、双子で自然分娩となると、途中で帝王切開に切り替わっても対応できるようにするため複数の医師が集合します。
私の場合、4人の医師がついてくださったのですが、全員で代わる代わる内診で手を突っ込んで、なにやら議論している様子…。
まな板の上のコイ。と、心の中で思いました。
そうして1時間くらい待機した末、担当医の方が来て言いました。
「三男くんは位置が変わったのですが、逆子ではないです。チームで話あった結果、自然分娩は可能だと判断しました。●●さんはどうしたいですか?」
私はそもそも自然分娩に強いこだわりもないし、どうしたいと言われても改めて困りました。
先生に伝えたのは、
「1人目は自然分娩で下から生まれて、2人目はお腹を切って、上も下も両方痛いという事態だけは避けたいです…」ということだけ。
最終的に、「先生、信頼してますので決めてください!」とついに丸投げしてしまいました。。。
よっぽど帝王切開にしましょうと言われると思っていたのに、先生の最終決定は自然分娩。
それを聞いた私の気持ち↓
そんなに自然分娩がいいかなあ…。
でもお任せしたんだし、決めてもらって気が楽だ~
私には、自然分娩か帝王切開かという選択肢はそもそもいらなかったようです。
雑念1:破水までの過ごし方…年末ジャンボにバーフバリ
私の場合、子宮口が開いていてすぐ生まれそうだからということで陣痛室は飛ばして最初から分娩台へ直行しました。
それでも待ち時間はけっこうあったので、分娩室に入ってまずは、年末ジャンボを買いました。
管理入院中に同室の仲間たちと話している時、「妊婦は運気があがるというジンクスがある」なんて話になり、「じゃ双子なら2倍の運気ってこと!?絶対年末ジャンボ買うー!」と盛り上がったためで…
どうせ買うなら妊娠期間が終了する直前、つまり分娩室で買おうと決意していたのです。
便利な世の中になったもので、分娩室に持ち込んだスマホでポチリ。
スムーズに買うことができ、まず目的はひとつ達成できたと、とても満足な気分でした笑
結果を言ってしまえば、年末ジャンボはまったくのスカでした。
2人分ということで3000×2=6000円もはりこみましたが、双子の運気はすべて安産で使い果たされたようです。
そして誘引剤導入の後は、長男の写真を眺めたりしていましたが、待ち時間が長かったので最後はprime videoで『バーフバリ』を観ていました。
分娩室でバーフバリ…。
なんだかふざけているようで記事の信頼性を落としそうな気がするのですが、「リアリティは細部に宿る」ということで書いておきます。
念のためにいえば、インド映画は素晴らしいです。腹の底から力が湧いてきます。
陣痛の時に観る映画としては…別にオススメはしませんが。
そんなこんなであまりにリラックスしすぎて、担当医がちょっとあきれ顔をしていたような気がします…。
破水から出産まで
本人がのん気に構え過ぎていたためか、バーフバリを15分ほど観たところで担当医が来て「破水させて陣痛を早めましょう」と言われました。
破水させたらすぐに生まれる可能性があるということで、それまで別室にいた8~10人くらいの医師やら助産師やらがゾロゾロと集合。
担当医がハサミを持っているのが見えて恐ろしかったのですが、人口破水はまったく痛くありませんでした。
破水後、たしかに陣痛が強くなり、「お腹痛いな~痛いの嫌だな~」の時間が始まりました。
子宮口が完全に開くまでの間の過ごし方として、四つん這いになったりテニスボールで腰をマッサージしたりして痛みを和らげるというのが一般的だと思っていたけれど、仰向けのままずっと腹式呼吸を繰り返すだけしかできませんでした。
なぜなら、破水後はまたしても複数の医師が代わる代わる内診で手を突っ込んできたから…。
まな板の上のコイ、再び。
そして、「子宮口が開大しました!」の掛け声。
本当に自分が頑張らなくてはいけない時になり、一生懸命いきみました。
「目を閉じるな」「声は出すな」と言われウーン難しいなあと思いつつ、とにかく早く出てくれ~メリメリメリ…。
まあ実際は大変な思いをしましたが、単胎のお産と同じなので次男の出産については割愛します。
経産婦なので、わりとスムーズに産めたようです。
問題はそのあとだ。
次男が出るなり、三男がさかさまにならないようにお腹に医師(か助産師かわからないけど)が2~3人が集中してグイグイと三男の位置を押さえ、最も緊迫感が高まりました。
「また陣痛きたらいきんでくださいねー」と言われましたが、エ、ちょっとまだ腹式呼吸とかして休みたいんだけどとか思ってフウフウ。
でもあんまりのんびりしていると陣痛が弱まってしまうそうで、とても急かされました。
じゃあ仕方ないからまたいきむか…いやちょっと…陣痛1回分だけでいいから休ませて…。
そうこうするうち、急遽会陰切開することになりました。
担当医が手短に説明してくれたところによると、「次男くんが出て三男くんが下がった拍子に、三男くんの腕が頭の横にはさまってしまったようです」とのこと。そりゃー仕方ない、切るしかないなら仕方ないよ。
麻酔を打たれ、感覚はないけれど切開され、そのバタバタのうちに三男は心拍も少し弱くなったそうで、今度は頭から吸引することになりました。
その吸引の器具を突っ込まれるのはめちゃくちゃ痛くて、ガボガボ突っ込まれてそれがもうとにかく力任せという感じで、いつも「優しい♡」と管理入院仲間にも評判の担当医を初めて鬼だと思いました。
そしてまた「いきんで」と言われ、また一生懸命いきみ、メリメリメリ…。
やっと三男が生まれました。
次男の誕生から三男の誕生までは10分しか違いませんでしたが、壮絶な10分間でした。
この10分間こそが、双子自然分娩の大変なところなんじゃないかと思います。
雑念2:サンバ事件
出産が近づいてくると、「バースプラン」なるものを書くことが多いと思います。
私も病院でバースプランを書く紙を渡され、その中に「出産の時にかけたい音楽」という項目がありました。
CDを用意すれば、好きな音楽をかけていいとのこと。
音楽に関しては少しばかりこだわりがあり、自然分娩か帝王切開かということ以上に悩みました。
最近はサブスクで聴いてしまうことが多いので、ノラ・ジョーンズなど落ち着く洋楽はCDを持っていないし。
BLANKEY JET CITYは好きだけど、まさか出産の時に聞きたい音楽とは違うし。
病院では無難にディズニーのオルゴール音楽を準備してくれるそうだけど、それも何か違うし…。
双子出産の時に適した音楽って何だろう?
そう考えていた時、ふと頭に浮かんだのがサンバでした。
そうだ、双子はサンバのリズムにのってやってくるんだ…!
ダンダ・ダンダ・ダダダダーン!!!ってお祭り騒ぎの愉快な出産。
そんな風に産みたい!
念のため、助産師さんに「サンバでもいいんですか?」と聞いたら、OKとのこと。
そこで、大学の時にサンバチームに入っていた友人に忙しい中でCDを準備してもらい、いざ出産に臨みました。
破水させる前のタイミングで担当医、
「このあとは一気にお産が進むかもしれないので、音楽をスタートしたら破水させますね」。
CD、スイッチオン。
破水。
ダンダンダンダ・ダンダンダダンダ…♪♪♪
分娩室が一気に明るい空気になり、これは良い選択をしたと悦に入る私。
ところが、そのうちに助産師さんたちがザワつきだしました。
「先生!サンバのリズムが双子ちゃんの心音に被ってモニターがとれません!」
音楽は即座に中止されてしまったのですが、私は心の中で笑いが止まらず。
そうか、赤ちゃんの心音はサンバのリズムと同じなんだwww
これは一生もののネタができたと、大満足の結果となりました。
全体を通して何かと不謹慎(?)な出産のように見えるのですが、どうせ生むときはしんどいのだから、人の目をはばかってもしょーがなし、自分にとってのお楽しみをつくってもいいんじゃないでしょうか。
生まれてみたら大きかった
長男の出産は、「赤ちゃんが生まれたら、『頑張ったね!』って声をかけてあげるんだ!」とずっと思っていて、その通りにしました。
双子の出産は「あ~終わって良かったーーー!」ということしかなかったです…笑
生まれてみたら、双子はモニターで見ていた時の推定体重よりもよほど大きいことがわかりました。
次男:2750g
三男:2918g
双子というのは、自然な陣痛を待たずに2週間早い日程で計画出産するもので、それはなぜかというと大きく育ちすぎるとお腹にいられないからということらしい。
だから双子は2500gくらい、あるいはもっと小さく生まれて、産後はNICUに入ることも多いらしい。
しかしウチの双子たちよ。
いつのまにそんなに立派に成長していたんだい…。
ふつうサイズじゃないですか。
入院仲間の担当のクールな先生が、ナースセンターで
「3000g近い双子の赤ちゃんが自然分娩で生まれた!●●病院で10年に一度の快挙!!」とテンション爆上がりしていたそう。
歴史ある病院に爪痕を残すことができて名誉なことです笑
彼らはそんな大きさだったから、生まれたばかりでしっかりとした存在感があり、なんとも安心でした。
雑念3:産後のイチゴババロア
次男が生まれたのは10時57分、三男が生まれたのは11時07分。
会陰切開などして一休みしたら、ちょうどお昼の時間…。
「お昼ご飯、食べますか?」の声がけに、ふたつ返事で応えました!
なぜなら、デザートがイチゴババロアということはチェック済だったから♡
長い管理入院生活で唯一の楽しみは献立表を眺めることで、同室の仲間たちと話すことも3割が病院食のことで。
出産予定日の昼食にイチゴババロアが出ることが分かった時は、きっと産後だから食べ逃すなあとガッカリしていました。
ババロアは小さい時からお誕生日にケーキの代わりにリクエストするくらいの好物なのです。
しかし、生まれた時から親孝行な双子のおかげでスピード安産で済み、思いがけず昼食が食べられることに。
「やった~、イチゴババロア食べられる!」と大喜びして出されたものすべてペロリと平らげたら、1週間後にはお掃除のおばさんまでそれが伝わって。
「ご出産おめでとうございます!イチゴババロア食べられて良かったですね♡」なんて言われることに…。
いろいろと武勇伝を残すことができて光栄です…。
自然分娩で生んだ感想
最後に、自然分娩を生んだことについての感想で締めくくりたいと思います。
自然分娩を選んで良かったかと聞かれたら、別に帝王切開でも良かったと思います。今もこだわりはまったくないです。万が一の可能性を想像するとやっぱりコワイ選択ではあったと思います。
自然分娩を選んだせいで死産になったら…死なないまでも、重大な障害が残ってしまったら…。
でもそんなことを言い始めたら、双子に限らずみんなが帝王切開で生まないといけないし、それはさすがに変だなあと思う。
病院としては、「自然なこと」として「自然分娩」で生ませてくれたのかなと思います。
また、自然分娩を人にオススメするかと聞かれたら、特にオススメはしません。価値観や身体の状態は人それぞれですので、その人が担当医と相談して考えればいいことだと思います。
結局、自然分娩か帝王切開かなんて選択肢は私には必要なかったようです。だから、最後に信頼できる担当医にお任せしたことこそ、自分にとっては最良の選択だったと思います。
帝王切開しか方法がないという人もいると思うと「選べる!」というのは贅沢なことかもしれませんが。
自然分娩でも帝王切開でも方法は何でもいいけど、無事に生まれてきてくれたことが何よりです。月並みに!